幕張総合高校の前期選抜②と邪推

幕張総合高校の件、テレビでも取り上げられたようですね。

 

昨日のブログの繰り返しになりますが、部活動等を重視した選抜を行うことは「自己表現でA判定の者から総合的に判定する」と事前に公表されているので問題はありません。

 

問題は「A判定の生徒リストが事前に作られていたこと」です。報道によれば、実技についてはリスト外でもA判定になる可能性はあったようですが(人数的には微々たるものと思いますが)、口頭による自己表現を選択した受験生は、どんなにスピーチを頑張ったとしてもA判定の見込みは限りなく0に等しかったとのこと。

 

「幕張総合高校に入りたい」という受験生の気持ちを踏みにじる行為に憤りを感じます。

 

ただ、報道によるとA判定枠は130名だったそうですから、前期選抜の定員(432名)に対する割合は約30%なんですよね。前期定員の70%(302名)と後期選抜の288名分は学力重視の選抜を行っていた訳ですから、特別活動重視の枠の大きさはごく普通と言えると思います。(幕張総合高校を進学校と捉えるならばやや大きいかもしれません) だからと言ってこれが受験生への慰めにはならないかもしれませんが…

 

ここからは私の邪推です。何の根拠もないのであしからず。

 

現在の千葉県公立高校入試が抱える大きな課題が「いつ入試を一本化するか」ということです。中学校と高校側の意見(一本化が望ましい)と生徒・保護者の意見(複数回受験が望ましい)が真っ向から対立していて、議論は平行線のままです。

 

もしかすると、今回の一件は特色化選抜から続く「多種多様な評価方法」にピリオドを打つきっかけとなり、学力検査と内申点による従来型の入試(つまり入試の一本化)に向けて千葉県は大きく加速するかもしれません。

 

今後の入学者選抜方法等改善協議会に注目していこうと思います。

 

 

幕張総合高校の前期選抜

毎日新聞で幕張総合高校の前期選抜に関する記事が掲載されました。

 

ただ、若干論点がずれているところもあったので、情報を整理したいと思います。

 

新聞では「実技審査でA判定のものは、自己アピールで受験した生徒より学力検査結果が100点低くても合格している」点に言及していましたが…

 

それは事前に公表されていることです。不正でも何でもありません。

 

ちなみに幕張総合高校の前期選抜の合否判定方法は以下の通りです。(高校側で公表されているものを分かりやすく要約しました)

 

学力検査結果での順位が定員の上位20%以内、または自己表現結果がA判定の者について、学力検査結果と評定値との合計値や調査書記載事項を資料として総合的に判定する。残りは、学力検査結果と評定値との合計値や調査書記載事項を資料として総合的に判定する。

 

「総合的に判定する」とありますが、実際は学力検査が上位20%以内の生徒はほぼ合格と思われます。自己表現結果がA判定の生徒は、新聞報道によると、学力検査で250点(高校の授業についていくために必要な最低学力)をクリアしていれば合格だったようです。そして、まだ定員まで残りがある場合は学力検査結果と評定値の合計による順位表を参考に上位から合格者を決めていく、という流れです。

 

ですから、自己表現でのA判定者の学力検査結果が他の合格者より100点低くとも、これはルール通りなのですから特に問題はありません。

 

問題はA判定の生徒が事前に決まっていたことです。

 

幕張総合高校の自己表現は「実技」と「口頭」の2通りありますが、新聞報道によると「口頭」でのA判定者はほぼ0名、「実技」では、事前にリストを作りA判定者を入試前に決めていたとのことです。

 

受験の公平性と言う観点で言えば、同じ検査項目(自己表現)にもかかわらず、「実技」か「口頭」で大きな差が生まれ、なおかつそれは試験前に決まっているのですから大問題です。

 

ですが…

 

一部の進学校を除けば、多かれ少なかれどの県立高校でもやっているのではないでしょうか? 考えてみてください。たかだか数分、長くても数十分の実技披露で生徒の本当のスキルを見極められると思いますか? ましてやそれを点数化できると思いますか? 高校によっては自己表現には150点もの配点があります。生徒ごとに120点とか125点とか細かく採点しているとは思えないんですよね。ほとんどの生徒は一律の点で、一部の生徒(高校側でリストアップしていた生徒)には満点、なんて採点をしている気がしてなりません。

 

県教委からは「“受験生に疑問を持たれないよう選抜基準を分かりやすく示す必要がある”として、他の県立高校にも基準の透明性を確保するよう指導する。 」というコメントがありましたが、私からすれば「何をいまさら」です。(多くの塾関係者がそう思っているのではないでしょうか)

 

特色化選抜の時代(H15~H22)から、ずっと入試の公平性・透明性は問題点だったではありませんか。10年以上も仕事をしてこなかったのは他ならぬ県教委だと私は思います。

 

今回の一件で、千葉県の公立高校入試が良い方向に向かっていくことを願ってやみません。

 

あと、現在幕張総合高校に通っている生徒(特に部活動を頑張っている生徒)に偏見を持つことは止めて欲しいと思います。事前にリストアップされていたとはいえ、部活動等の特別活動で優れた実績を有し、なおかつ高校側で授業についてくるだけの学力があると判断されて合格した訳ですから、彼らは何も悪くありません。今回の問題点は「事前にリストができており、実技と口頭で採点差が生じていたこと」であり、悪いのは大人たちです。在校生には引け目を感じることなく残りの高校生活を楽しんでもらいたいと思います。

 

最後に細かい情報を。

 

①新聞報道では「校内からの批判もあり、自己表現でのA判定者の合格ラインを250点から265点に引き上げた」とありましたが、今年の前期選抜はおそらく平均点が40点ほど上がっていますからボーダーの15点アップは無意味です。

 

②数年前の幕張総合高校の合否判定方法は、「学力検査結果が上位、及び自己表現結果がA判定の者について、学力検査結果と評定値との合計値で…」というものでした。私、実はそのとき「“学力検査が上位で、かつ自己表現がA判定の者”はほとんどいないのでは? “及び”は間違いで“または”が正しいのではないか?」と高校に問い合わせているのです。高校の対応は「一切お答えできません!」「公表しているのが全てです!」と随分とけんか腰で不快な思いをした記憶があります。ちなみに翌年から「及び」は「または」に変わりましたけどね。

 

③特色化選抜の時代に生徒から「自己表現の時間にグループ分けをされたんだけど、どうみても上手い組とそうじゃない組なんだよね。顔見れば他校の生徒でも選抜チームとかクラブチームの子は有名だから分かっちゃうんだよね。」と言われたことがあります。つまり事前のリストアップはその当時からだった訳で…